環境建築
Environmental Building
原著作者 CAT's free information service
日本語訳 CAT普及協会
日本語訳に関する連絡先 infodesk@cat.or.jp

エコビルドはCATの主な事業領域の一つである。新築についても、増改築についても、CATは様々な支援策を用意している。CATでは各種の建材や工法を展示しており、また、解説書の出版や宿泊研修を実施している。

このシートでは、選択可能な建材や工法の概要を説明するが、より詳しくはCATの出版物を参照されたい。中でも「エコロジカル住宅大全」(The Whole House Book / Cindy Harris and Pat Borer著)は、建材選定、健康への影響、費用対効果、環境への影響の低減などを網羅した総合的参考書である。

省エネルギー

英国の二酸化炭素排出量の30パーセントは家庭でのエネルギー消費によるものである。大気中の二酸化炭素の増加により、我々は異常気象を引き起こし、その結果、海水位上昇や洪水、荒天、干魃の頻発を招いている。

家庭のエネルギー消費の四分の三は暖房用であるから、セルフビルドを志す人は、省エネルギー効果の高い設計をして二酸化炭素排出を低減する機会を得る事になる。それは同時に、エネルギーの費用の提言をも意味する。そして、所要のエネルギーに応じてソーラーパワーや薪などの再生可能エネルギー(気候変動を招かないもの)を用いれば、環境へのの悪影響を更に提言する事ができる。

主に検討すべき事項は次の三つである:
  • 断熱材
  • 十分なすきま風対策
  • 熱を逃がさない換気

  • 断熱の為に若干余分の支出をするだけで、省エネルギー効果を永続的に大きくする事が可能である。CATの「Insulation(断熱材)」リーフレットは、環境と調和する素材の選定と施工について解説している。

    優れた仕様の扉や窓は、すきま風を防ぎ、熱を逃げるのを最小限に抑える。アルゴン充填low-e(低放射加工)複層ガラスは最も省エネルギー効果に優れ、PVC(硬質塩化ビニール)やアルミよりも環境への悪影響が少ない。

    英国の様な気候下では、暖気が屋内を自然に対流し、南面するサンルームの様な緩衝帯を経て入って来た外気と入れ替わる様な換気方式が望ましい。
    訳注:
    原文では「我々の温暖な気候に於ては」となっていますが、CAT周辺の気候は日本とはやや異なるので、「英国の様な」と訳しました。

    床下暖房は、ラジエーター(放熱器)を設置する方式が摂氏75度で動作するのに比べて、僅か35度で動作し、効率が良い上に快適なものである。
    訳注:「床下暖房」は原文の直訳です。ここでは在来のセントラルヒーティングと温水暖房を比較していると思われます。

    行き届いた設計の省エネルギー住宅では、暖房の半分は太陽光を受動的に利用するだけで賄える。窓や扉を周到に考慮して配置する事により、利用可能な太陽光を利用し尽くす、理想的な姿となる。CATの「環境建築」仕様書はエネルギー効率、環境への悪影響を低減するデザインなどについて解説している。また「省エネルギー住宅」ではエネルギー消費と出費の双方を削減する方策について解説している。

    再生可能で健康に害を及ぼさない素材

    サステーナブルな建材とは、豊富に得られる物(例:土)か再生可能な資源(例:良く計画・管理された森林から産出される木材)である。一方、建物が寿命を終える時にはどんな事が起こるだろうか。建材は直ちに再利用できるだろうか。一般的な建材の多く(PVC製窓のプラスチック充填材など)は再利用も再生もできない。英国の一人当たりの建築廃棄物は一般家庭ゴミの倍量にも達するのである。

    木材は自然由来で用途が広く、美しいものである。サステーナブルな方法で採集された木材を選ぶ為には、FSCマーク(関係連絡先参照)の有無を判断基準にするのが望ましい。希に化学処理が必要になるが、それを避ける為には良く乾燥した木材を選び、水はけと換気に配慮した設計を行えば良い。

    麦藁は、あまり価値を認められず、英国では有り余っている。しかし、手頃な大きさの俵状に加工すると、短時間で簡単に施工できる建材となる。また、密度を高めれば効果的な断熱材となる。

    は、()き固めたり泥団子にするなどして、火で加工しなくても、あらゆる用途に使える。近隣の鉱山から出る底土は、正に省エネルギー建材と言える。

    天然素材由来の塗料にも注目したい。それらは植物製の樹脂、油脂、染料から出来ており、健康に害を及ぼすガスの発生せず、最終的には生物分解が可能である。微量だが、同じ仕組による燃料の生成も始まっている。

    総エネルギー消費量と総環境汚染量

    日常生活に於けるエネルギー消費量を最小限にできたとすると、建築工事の為のエネルギー消費量が、建物が存続する全期間に渡るエネルギー消費量の中で大きな比率を占める事になる。従って、省エネルギー住宅の計画に当たっては、建材の慎重な選定が重要である。

    ここで言う建物の「総エネルギー消費量」とは、全ての建材の採集、加工、輸送に費やされるエネルギーを皆含む。木材の伐採、加工に要するエネルギーは少量であり、地元産出の木材を入手できるなら、総エネルギー消費量は至って僅かに抑える事ができる。もし、地元で再生された木材を入手できるなら、総エネルギー消費量は更に低減可能である。

    勿論、工法が異なれば建材の使用量も異なる。従って、ある工法について評価するには、環境への悪影響の度合と効果の度合の比較が必要である。受動型太陽光利用の場合、コンクリートの床を設けて太陽からの熱を蓄積する。この蓄積効果は環境への悪影響を上回るものと言える。

    このグラフは、在来の煉瓦造住宅と十分な断熱を施した木造住宅の総エネルギー消費量を比較したものである。

    セメントは、製造に熱を要し、化学処理、二酸化炭素排出やその他の汚染を伴うので、総エネルギー消費量は大きい。殆どの場合、石灰製品で代替が可能であり、環境への影響は少なく、費用対効果も良好で、造形の自由度があり、通気性も望める。

    PVC(ポリ塩化ビニール)は用途が豊富で、広く建築に用いられているが、製造段階と廃棄後の汚染が深刻である。代替品として、ポリブチレンとポリエチレンが環境への影響が小さく、再生が可能である。

    計画と工事

    サステーナブルな建築の為には、時に気が遠くなる様な許認可手続が必要になるが、CATの「Planning(建築計画)」リーフレットにその為のアドバイスを掲載している。

    セルフビルドとは、必ずしも建築主自身の肉体的作業を要するものではなく、工事や収支を注意深く監理するだけでも効果的である。しかし、多くのエコビルド手法は素人大工でも実現可能である。CATでは「森の恵み −エコロジカルデザインによるセルフビルド木造住宅−」で、Walter Segalのセルフビルド手法を刊行している。同書では、豊富な写真や図面と共に木造住宅のセルフビルドのあらゆる側面を詳解している。

    また、「(わら)の家の造り方」では、低廉で効果的な工法をステップバイステップで解説している。「屋根上緑化」リーフレットでは、DIYによる屋上緑化を解説している。

    追加情報

    CATでは、他にも多くのエコビルド関連の書籍を刊行しており、全て通信販売で入手可能である。自然塗料"Auro"や"Warmcel"(古新聞再生品)、"Thermafleece"(羊毛)と言った断熱材の販売も行っている。通信販売のページを是非参照されたい。

    CATの各種解説リーフレット、仕様書、リソースガイドは、このウェブサイトから有料でダウンロードする事ができる。

    CATの宿泊研修では、木造住宅セルフビルド、省エネルギー住宅設計、土や藁による住宅建築のコースも実施している。また、環境建築修士課程も開設している。詳細については、研修事業のページを参照されたい。

    また、CATでは、このページで述べている事や特定の工法、建材に関する質問、製造業者や工事業者に関する質問を受け付けている。再生可能エネルギーを利用するシステムや節水機器は、新築の際に導入すると極めて効果的なので、より良い選択の為に他の情報シートも参照されたい。

    更に具体的、専門的が必要な場合、多くの人は建築計画の早い段階から施工業者と共にCATのコンサルト事業部門を訪れ、各の計画について相談している。コンサルト事業部門のページも参照されたい。

    関係連絡先

    各地の、環境を意識した建築業者はthe Association for Environment Conscious Building (AECB)で探す事ができる。www.aecb.net

    The Forest Stewardship Councilは、環境及び社会的な意味でサステーナブルに生産された木材に認証を与えている。FSCロゴが目印になる他、販売業者についてはFSCが直接案内に応じている。www.fsc-uk.org

    CATの「環境建築分野リソースガイド」と「省エネルギー分野リソースガイド」は、数百以上に及ぶ製造業者、施工業者、団体、出版物などを紹介している。また、このウェブサイトの新しい業者検索ページも有効な手助けとなる筈である。


    本文全体に関する訳注:
    原典にあるリンクは、可能な限りこの日本語版でも再現していますが、対応するリンク先を用意できていないものについては下線を付けました。また、原典には幾つかの電話連絡先も紹介されていますが、この日本語版では省略しました。


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